現在、外国人労働者の雇用管理にあたっては労働関係法令のほか、「外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が適切に対処するための指針」というものがあり、当該指針に従って外国人労働者を雇用すべきとされています。
「指針」には法的拘束力は通常伴わない、いわゆる「努力義務」という位置づけですが、指針に反することで、関係法令に抵触する項目もあること、入管の認定・更新等の審査において指針に反した運用を行うことは不利にはたらく恐れもあることから、事実上「外国人労働者を雇用する場合」においては必達であるものです。
令和8年4月13日付報道によれば、当該指針を見直すとの報道がされました。今回は当該報道の内容と雇用主側への影響について考えてみたいと思います。
本稿は令和8年4月13日付で報道された指針の見直しに関して、現時点で報道により判明している情報を基に執筆しております。内容については執筆者の見解も入っており、本稿の内容が確定しているものではありません。本稿を参照し、何らかの損害が生じても当事務所では責任を負いかねますのでご了承ください。
現行指針はどのような内容か?
要旨をまとめると以下の通りです。
⑴ 募集
- 労働条件の明示
- 渡航費用の負担、住居確保について明確にするように努める
- 国籍差別をしないこと
⑵ 採用
- 在留資格が該当性あることを十分に確認すること
- 新卒者採用のときに「留学生であること」を理由に対象から除外しないこと
⑶ 適正な労働条件の確保
- 国籍を理由に差別的な待遇をしないこと
- 労働条件の明示、賃金に関する説明をすること
- 適正な労働時間を管理すること
- 労働関係法令について周知すること
- 労働者名簿を調製すること、家族の住所など緊急時の連絡先を把握するよう努めること
- パスポートを預からないこと
- 退職時に返還すべき金員は返還すること
⑷ 安全性の確保
- 外国人に理解できるように安全衛生教育を実施すること
- 労災防止のため、指示等を理解できるよう日本語、合図等を習得させるように努めること
- 健康診断の実施、健康相談の実施に努める
- 労働安全衛生法等の周知に努める
⑸ 適切な人事管理、教育訓練、福利厚生等
- 適切な人事管理
- 生活指導等
- 教育訓練の実施等
- 福利厚生
- 帰国及び在留資格変更の援助
- 派遣又は請負に関して関連法令の遵守、注文者先での作業においては適切な教育
⑹ 解雇の予防及び再就職の援助
- 安易に解雇しない
- やむをえない場合は公共職業安定所と連携して適切に対応すること
外国人労働者の雇用状況の届出
公共職業安定所に以下の届出が必要です。
イ 雇用保険被保険者資格を有する外国人労働者(ハに該当する者を除く。)について
氏名、在留資格(資格外活動の許可を受けて就労する者を雇い入れる場合にあっては当該許可の有無を含む。ロにおいて同じ。)、在留期間、生年月日、性別、国籍のほか、職種、賃金、住所等の雇用保険被保険者資格取得届又は雇用保険被保険者資格喪失届に記載すべき当該外国人の雇用状況等に関する事項
ロ 雇用保険被保険者資格を有さない外国人労働者(ハに該当する者を除く。)について
氏名、在留資格、在留期間、生年月日、性別、国籍
ハ 平成十九年十月一日の時点で現に雇い入れている外国人労働者について
氏名、在留資格、在留期間、生年月日、性別、国籍
※届出義務は雇用主は見逃しがちですのでお気を付けください。
外国人労働者の雇用労務責任者の選任
10名以上の外国人を常時雇用する場合には人事課長等を外国人の雇用労務責任者に選任する必要があります。
技能実習生に関する事項
労働関連法及び上記に加え、技能実習制度推進事業運営基本方針(平成五年四月五日労働大臣公示)の各事項を留意すること
職業安定機関、労働基準監督機関その他関係行政機関の援助と協力
職業安定機関、労働基準監督機関その他関係行政機関の必要な援助と協力を得て、この指針に定められた事項を実施すること
何が変わるのか?
報道の内容によれば、「不法就労防止の観点からも適切な雇用管理が事業主の責務であることを明記」「罰金の存在を追記し周知」「在留カードを確認する際、偽造の有無が確認しやすい専用アプリの使用を推奨する」といったものです。
不法就労防止の観点からも適切な雇用管理が事業主の責務であることについて
不適切な取り扱いをした結果、「脱走」する外国人労働者が発生し、そのものが「不法在留・就労」や場合によっては「反社会的行動」に出ることを踏まえて、雇用主側にそのような事態に陥らないよう責任ある雇用をより義務付けする意味合いと思われます。
罰金の存在を追記し周知について
もともと、虚偽・未届については30万円以下の罰金があり、ほか不法就労助長罪や日本人を含む労働関係法令の違反には罰金等の刑罰がありますが、改めてこれらを周知する目的で加えるものと思われます。
在留カードを確認する際、偽造の有無が確認しやすい専用アプリの使用を推奨することについて
在留資格が「永住者」「日本人の配偶者等」のように就労制限がない在留資格(どんな仕事をしてもOK)であると偽って就労しようとする外国人もいます。また、既にオーバーステイなど問題のある外国人も同様です。
これらの者の身分確認としては「在留カード」が用いられますが、在留カードを偽造するケースも少なくないため、偽造を見破ることも雇用主側のリスクヘッジとして必要になってきます。
※雇用前の段階で在留カードを確認する行為は「国籍差別に繋がる可能性」は指摘されていますが、採用段階で虚偽が判明するリスクを考慮すれば最初の段階で「本人の同意を得て」確認するのが望ましいと考えています。
まとめ
現時点で把握できる情報を見る分には、特に新しい規制が入るわけではなく、これまで求められてきたものや定まっていたものを周知徹底するために改正するという見方が正確かと思われます。
従って現状合法に雇用している雇用主については然程影響はないと思料します。
ただ、これまで入管業務においては「なんちゃって技人国」や「ペーパーカンパニーによる経営・管理」、「本旨に外れた技能実習制度の利用」、「偽装結婚」といった外国人関係の法的問題があまりクローズアップされませんでしたが、近年のインバウンド観光客のマナーの問題や偽装難民疑惑の問題などが問題視されるようになったのに引きずられて、外国人に対しての扱いがこれまでに比べ厳格に行われることになるのは間違いありません。
もし、現在の運用に不安がある等ございましたらお気軽にご相談ください。


