昨年10月より在留資格「経営・管理」において、資本金要件が500万円から3000万円に引き上げされたことは、多くの方がご存じかと思います。
今回は要件のことではなく、実際に日本において経営活動を行う外国人が3000万円をどのように準備するか?ということについて実務的なことを交えながらご説明します。
なお、厳密にいえば資本金は「会社がある前提」であり、個人事業主でも一応「経営・管理」の対象にはなりますが、大体の場合会社を設立するので、今回は会社を作る前提でご説明します。
そもそも「資本金」とは?
資本金という言葉自体は良く聞きますが、実際に「資本金」が何なのか?ということを簡単にお伝えします。
まず、事業を展開するにはお金は必要です。
事業をするためのお金には2通りあって、「返さなければいけないお金(借入れ)」と「返さなくていいお金(資本金)」にわかれます。
資本金はいわば会社の規模や信用度つながるもので、法人の場合は登記して誰でも見られるようにする必要があります。(厳密には資本金の登記されている額の大小だけでは会社の信用度は計れませんが、一旦このように説明させていただきます。)
資本金は、現行会社法であれば「1円」から設立可能です。ただし、実務上はある程度の金額を入れることが多いです。(資本金1円の会社は信用できないと思う方が多い。)
資本金の元手として「借入金」を入れるのはNG
資本金を借り入れしたお金で捻出するのは禁止されています。(会社法第52条の2、「出資の履行の仮装」)
借りたお金は当たり前ですが返さなければいけません。資本金は先ほど述べたように「返さなくていいお金」です。従って、「返さなくていいお金がこんなにあるよ」と登記しているのに実は返さなきゃいけないお金ということになると、嘘を登記することになります。
別な記事で取り上げたことがありますが、「登記上の資本金額」と「自己資本」は別の概念です。取得する許認可等によって「登記上の資本金額」に重きを置くか、「自己資本」に重きを置くかは注意しましょう。(在留資格「経営・管理」では基本的に「登記上の資本金額」ですが、決算書を提出するので、新設以外の場合においては「自己資本」も見られることになります。特に債務超過状態だとかなり不利になります。)
資本金の元手についての確認は?
在留資格「経営・管理」の場合、いくつかの観点で資本金の元手がどこから来ているのか?という点は確認されます。
⑴ 共通事項
上記のような「借入金ではないかどうか?」というのは確認されると考えて準備する必要があります。資金の動きについては日本国内及び国外の銀行の取引履歴等を確認されることが多いので予め準備しておくことが好ましいです。
資本金は日本の金融機関に最終的に入れておく必要がありますが、資本金がどのようにそこまで辿り着いたかをきちんと説明出来る必要があります。
⑵ 既に日本に在留していた者が変更等で新たに申請する場合
上記に加えて、日本国内で「不法就労していなかったか?」という観点が追加されます。
従前の500万円でも日本で就労して貯金するのは結構大変な額です。それが現在は3000万円になりましたので、その大金をどのように捻出したか?という点について、在留していた者についてはより慎重に確認されます。
特に「留学」から変更しようとする場合は、週に28時間以内のアルバイトでこれだけの大金を稼ぐのは困難であることから、お金の出どころをしっかり証明しないと、在留資格が認められるかどうか以前に不法就労を疑われてしまいます。
資本金を準備するより難しい?実際上の国内での手続き
⑴ 日本で資本金を受ける口座の準備
在留資格「経営・管理」で申請しようとする人は、多くの場合富裕層なので、お金の準備自体はそこまで困らないケースもあります。
しかし、「お金がある」ということと、「お金を日本に持ち込む」ことは別問題で、「お金を日本に持ち込む」のは結構大変です。
一般的に資本金は日本にある銀行等の口座に資本金を入金します。この履歴(通帳・取引履歴等)は法務局に設立登記する際に提出します。
外国人は「中長期在留者(4か月以上の在留期間を持つ外国人)」じゃないと銀行は口座を作らせてくれません。また、実務上は中長期在留者でも口座を作らせることに慎重になります。というのも、「外国人についてはマネーロンダリングに悪用される懸念がある」という事情から内部のコンプライアンスが厳しく、申請しても作れないことが多いのです。
最近は日本人が経営する会社でも設立したての会社には同様の対応をすることが多いです。理由は一緒で悪用される恐れがあるためです。(日本における特殊詐欺の振込先口座はよくわからない会社名であることもあります。)
一応、「経営・管理」においては4か月の在留期間のものもあるので、起業準備として入国し、自分で口座を開くことが理論上可能ではありますが、実際上は4か月の在留期間で入国しても口座開設を断られることが多いので、準備が進まない懸念があります。
そのため、実際上は「日本人若しくは日本にいる中長期在留者の外国人に協力してもらう」というのが一般的に取られる方法です。
⑵ 資本金の送金について
では、上記⑴で何とか日本の銀行口座を確保したとして、実際に外国から日本の口座に送金するのも大変です。
これは、日本国内の銀行等の側の視点と国外の視点の二つに分けてお話します。
まず、日本国内の銀行等は国外からの入金について受け付けるかどうかを慎重に検討します。先ほども出てきた「マネーロンダリング」を懸念してのことです。この点については、受付けてもらえるにしても、「何のお金か?」を示す必要があります。今回のケースでは「新しい会社の資本金に充てる」ですから、ちゃんと会社を作って経営していくということを説明する必要があります。説明も口頭ではなく、書面で説明できるようにしておくべきでしょう。
次に国外側の視点です。中国は代表的な例ですが、国外出金に対して規制のある国もあります。持ち出しが難しい国の場合は帰国するたびに持ち出し可能な現金を自分で持ち出す…ということも多くあります。500万円でも家族総出で2往復くらいするケースが多かったですが、現在は何往復も必要で、相応に時間と費用がかかります。
まとめ
- 資本金は「返さなくていいお金」である必要があるので、借入金は厳禁
- 外国人が新規で設立する場合、資本金の出どころは問われる
- 特に、既に日本に在留している外国人は厳しめに問われる
- 資金の準備も大変だが、「資金を日本に入れる」ことはもっと大変
- 外国人が新たに会社を作るのは時間と労力がかかるので、早めに相談を
当事務所のご紹介
当事務所の行政書士は在留資格「経営・管理」について取り扱った経験があります。また、事例の少ない「北海道スタートアップビザ」についても支援経験があります。(北海道スタートアップビザについてはこちら)
司法書士や税理士と言った他士業とも連携して無事入国して経営活動にあたっていただいているクライアント様が多くおられます。
札幌市、近郊で「経営・管理」の認定申請(新規申請)、更新、顧問等のご相談は積極的にお受けしております。
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