「北海道スタートアップビザ」とは、外国人が北海道で新たに起業する際に、すぐに在留資格「経営・管理」を取得するのではなく、まず、行いたい事業計画について北海道の確認を受けたうえで、起業準備のための在留資格「特定活動」で在留し、北海道スタートアップ推進室の支援を受けながら、起業準備を進めるための制度です。
もともと北海道だけの制度ではなく経済産業省から認定を受けた自治体等が同様の制度を設けています。(詳細は経済産業省ホームページ)
北海道は、令和元年9月25日に経済産業省から認定を受けています。
制度利用者は次の2パターンが想定されています。
- 新たに入国して経営活動を開始したい外国人(認定申請)
- 既に日本に別な在留資格で在留して、起業準備を開始したい外国人(変更申請)
また、「北海道」スタートアップビザなので、あくまでも北海道で主たる営業を行い、北海道経済・地域に貢献する事業である必要があります。
具体的には以下のような事業です。
- 地域を支える農林水産業の成長産業化を促進する事業
- 地域資源を活かした食関連産業の振興を促進する事業
- 観光産業の先進地・北海道の実現を促進する事業
- 高い付加価値を生み出すものづくり産業の振興を促進する事業
- 市場規模やニーズの変化に応じた産業の創造を促進する事業
- その他、知事が必要と認める事業
大まかな流れ
まず、北海道に事業計画について「起業準備活動確認証明書(以下「証明書」)」を発行してもらうため、エントリー―と本申請を行い、証明書を発行してもらいます。
証明書を発行してもらうためには、以下の点を証明(書類を提出)する必要があります。
- 上陸又は在留資格の変更後1年間の申請者の住居を明らかにする書類(賃貸借契約書の写し等)
- 上陸又は在留資格の変更後1年間の申請者の滞在費を明らかにする書類(申請者の預金通帳・銀行の残高証明等)
- 所定の学歴、実務経験を立証する資料(卒業証書の写し、就労証明書等)
- 申請者が外国人創業活動促進事業を活用した実績がある場合、在留資格認定証明書の写し又は自治体が発行した創業活動確認証明書の写し
- 申請者の旅券の写し(顔写真、パスポート番号記載ページ)
- その他知事が必要と認める書類
当然ですが、上記のほかに事業計画、行動計画(いつ何をするつもりか?)、資金・利益計画、履歴書を提出する必要があります。
証明書の交付を受けたら、「3か月以内」に入管に認定又は変更の申請をします。
基本的に提出する書類は証明書及び上記証明書の申請時に出した書類を提出します。
審査については「通常の経営・管理の申請より早い場合が多い」です。一応北海道で事前に審査しているという前提で入管は審査します。
ただし、証明書を得るまでに相応に期間を要する(3か月~4か月程度)ので、スタートアップビザが経営・管理に比べて楽というわけではありません。
スタートアップビザの目的は?
本来、外国人が日本で会社を設立して事業を行うには、在留資格「経営・管理」の取得が必要です。
しかし、会社設立、事務所の確保、資金計画の整備など、入国前から多くの準備が必要になるため、海外にいながら一人で進めるのは簡単ではありません。
スタートアップビザ制度がなかったときは、「短期滞在」で入国して起業準備を行うケースもありましたが、実態として、「短期滞在」だと銀行口座の開設や事務所を借りることができませんでした。
そのため、多くの場合は日本人又は中長期在留者(在留カードをもっている外国人)の協力者を得て、起業する必要が実務上ありました。
在留資格「経営・管理」でも4か月の期間で同様の準備活動を行うことは可能ですが、自治体の活性化を目的として、長期間で、かつ、自治体の起業・経営のアドバイスを受けながら「未来の起業家」を後押しする目的で作られた制度です。
従って、先ほど紹介したように、「北海道で主たる営業を行い、北海道経済・地域に貢献する事業である」ことが必要なのです。
制度利用の実態は?
内閣府の『第2期スタートアップ・エコシステム拠点形成計画』によれば令和元年11月から令和7年3月までの累計で、申請件数43件、うち在留資格の認定又は変更(ビザ取得)が25件と示されています。
既に制度が出来てから、8年目(上記累計時点では7年)経過している割には制度利用が多くありません。
その要因としては、まずコロナ禍があったと考えられます。コロナ禍は令和2年の3月ころから世界中を震撼させました。くしくも制度が始まって間もない頃のことです。コロナ禍で人の往来、特に国家間の往来が事実上著しく制限されたこと、先行きの不透明さから敬遠されたことが考えられます。
もう一つには「実務上制度の利用のしづらさ」があります。証明書を申請する最初の段階で、「入国から1年間の滞在先」を示すことが必要ですが、国外にいる外国人が住民票登録のない状態で物件を貸してくれる人は多くありません。また、保証人は保証会社がつくことが多いですが、「緊急連絡先」に日本人を登録してほしい等の要望は多いです。ほか、資本金や生活費を入金することも、国外から行うのは容易ではありません。特に中国あたりでは国外送金に厳しくなっています。
他の国からの入出金でも、そもそも日本国内の金融機関がマネーロンダリングに厳しくなっており、「外国人」に限らず、日本の新規法人に対してさえも口座開設が厳しい現実を考えれば、「事業準備を行う」ことそのものが容易ではないことを示しています。
これは、「経営・管理」の4か月のビザでも一緒ですが、実態上外国人が国外から資金を入れることが困難であることが、制度活用を妨げているという一面があります。
結論を言えば、「結局日本国内に協力してくれる人は事実上必要」であることが多いです。ただ、仮に日本国内の協力者がいるのであれば、最初から「経営・管理」で申請する方が手っ取り早いので、制度が十分に生かされていないといえます。
よって、どちらかというと「既に日本にいて、これから起業活動を行いたい人」向けの制度だといえます。
起業準備活動中について
起業準備活動は、証明書を取得する際の計画に基本的に従って行います。
月に1回程度北海道の職員と面談を行います。当事務所でお手伝いしている場合は、道に断られない限りは初回は同行します。
2回目以降は基本的に同席は求められないと思います。
基本的には「計画通り」に行うよう努力する必要がありますが、計画通りにいかなかった場合は都度調整して、「どう軌道修正するのか?」ということを積極的に説明していく必要があります。
スタートアップビザの期限は6か月で、1回まで更新することができます。つまり、1年以内に準備を終えて、「経営・管理」の在留資格に変更する必要があります。
6か月を終える前に北海道から更新の確認書を貰って、入管に在留更新を申請しますが、この段階で「1年以内に起業準備活動を終えるめどが立たない」場合は確認書の申請が棄却されます。棄却された場合、原則として帰国しなければいけません。
外国人に限った話ではありませんが、起業準備から頓挫して断念してしまうケースは一定数存在します。そのため、先ほど述べたように申請件数が43件、うちビザ取得が25件(60%弱)という結果になっていると思われます。
北海道スタートアップビザのサポートは行政書士に相談を
北海道スタートアップビザは理屈の上では「国外にいる外国人が、日本人の協力者を得ずとも起業ができる制度」です。起業家を目指す外国人のサポートも北海道が行っています。
ただ、実態は色々な場面で専門家のサポートが必須だと考えます。
当事務所の行政書士は北海道スタートアップビザの受任経験があります。
ご興味ございましたら是非お問い合わせください。
(当事務所では北海道スタートアップビザのご相談は初回から有料で、別途通訳を要する場合は通訳費用が発生します。ご了承ください。)


