令和7年10月16日より在留資格「経営・管理」の許可基準が大きく改正されました。改正に伴い認定申請(新たに日本に入ってくる人)は新基準で申請を要します。
では、今まで旧基準で入国し在留している方はどのような扱いになるのでしょうか?
今回は旧基準で在留する方の取り扱いと、新基準と旧基準の違いについてご説明します。
事実上「2年以内」に新基準に該当する必要がある
基準が変わったからと言って、すぐに旧基準の方の適合する必要はありません。
出入国在留管理庁が発表した『改正に関するガイドライン』(以下「ガイドライン」)によれば以下の通りです。
既に「経営・管理」で在留中の⽅が施⾏⽇から3年を経過する⽇(令和10年10⽉16⽇)までの間に在留期間更新許可申請を⾏う場合については、改正後の許可基準に適合しない場合であっても、経営状況や改正後の許可基準に適合する⾒込み等を踏まえ、許否判断を⾏います。なお、審査においては、経営に関する専門家の評価を受けた文書を提出いただくことがあります。
簡単に言えば、令和10年10月16日までの更新申請の場合は「必ず新基準に適合している必要はない」ですが、「今後新基準に適合する見込みがあれば許可する可能性がある」ということです。
この表現は救済措置にも取れますし、見方によっては「新基準に適合する見込みがない場合は不許可になる可能性」が一定以上あるというものなので、直近の更新で危機的な状況の方もおられると思います。
ただ、令和10年10月16日までに多くても更新2回以内(1年ごとの更新として)ですから、その間に要件を満たしておく必要があります。若干期間がありますが簡単にできるものではない難しい改正でしたので急いで準備する必要があります。
では、新基準はどの程度厳しいものなのでしょうか?
新基準と旧基準の違い
今回の改正は極めて影響が多く、各方面から色々な意見が出ておりますが、大きく取り上げられているのは「常勤職員の雇用」「資本金の額」「申請者または常勤職員の日本語能力」「経歴・学歴」「事業計画書の取扱い」です。順を追ってみていきましょう。
⑴ 常勤職員の雇用
ガイドラインでは以下のように記載されています。
申請者が営む会社等において、1人以上の常勤職員を雇用することが必要になります(出⼊国管理及び難⺠認定法第7条第1項第2号の基準を定める省令「法別表第⼀の⼆の表の経営・管理の項の下欄に掲げる活動」第2号イ)。
(注)「常勤職員」の対象は、⽇本人、特別永住者及び法別表第⼆の在留資格をもって在留する外国人(「永住者」、「⽇本人の配偶者等」、「永住者の配偶者等」、「定住者」)に限り、法別表第⼀の在留資格をもって在留する外国人は対象となりません。
注意すべき点としては常勤職員は「日本人」か「特別永住者」「永住者」「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」「定住者」に限られることです。「技術・人文知識・国際」や「技能」のような就労系在留資格の外国人では要件を満たしません。
旧基準では「資本金500万円以上又は常勤職員(定義は上記と同じ)の雇用のいずれか」であったため、「資本金500万円あれば不要」でしたが、今回からは常勤職員の雇用が必須となりました。
「常勤」なので社保の加入も必須ですし、場合によっては社保の加入を示す書類や常勤職員が日本人であるか?基準に適合した外国人であるか?は証明する必要があると思われます。
⑵ 資本金の額等について
3000万円以上に引き上げられました。
先ほどの話と重複しますが、従前は「500万円以上又は常勤職員の雇用」なので、実際は少ない事案と思いますが、常勤職員を雇用していれば資本金額はこだわらなかったのですが、今回は資本金と常勤職員の雇用はそれぞれ独立して要件となりました。
旧基準では500万円であったので、今在留している方については令和10年10月16日までに新基準に合わせる必要があります。
在留資格「経営・管理」では、業種は問われないので同じ在留資格でも色々なビジネスをしている方がおられますが、ビジネスモデル的に短期間で大きく稼ぐようなビジネスではない方(例えば飲食店)は危機的な状況にあると思われます。
また、増資を行う場合には「資本金の出どころ」を詳しく説明する必要があります。
⑶ 日本語能力について
ガイドラインには以下の通り書かれています。
申請者⼜は常勤職員(注1)のいずれかが相当程度の⽇本語能⼒(注2)を有することが必要になります(第3号)。
(注1)ここでいう「常勤職員」の対象には、法別表第⼀の在留資格をもって在留する外国人も含まれます。
(注2)相当程度の⽇本語能⼒とは、「⽇本語教育の参照枠」におけるB2相当以上の⽇本語能⼒であり、⽇本人⼜は特別永住者の⽅以外については、以下のいずれかに該当することを確認します。・ 公益財団法人⽇本国際教育⽀援協会及び独⽴⾏政法人国際交流基⾦が実施する⽇本語能⼒試験(JLPT)N2以上の認定を受けていること・ 公益財団法人⽇本漢字能⼒検定協会が実施するBJTビジネス⽇本語能⼒テストにおいて400点以上取得していること・ 中⻑期在留者として20年以上我が国に在留していること・ 我が国の大学等高等教育機関を卒業していること・ 我が国の義務教育を修了し高等学校を卒業していること
ほとんどの場合は「常勤職員」で日本語の要件を満たすことになると思います。ただ、外国人を採用する場合は「日本語能力試験を受かっている」「20年以上の在留」「日本の大学卒業」「日本の義務教育を修了し、かつ、高等学校を卒業している」のどれか一つが必要です。
「日本の義務教育を修了し、かつ、高等学校を卒業している」ということは小学校、中学校、高等学校のすべてを卒業している必要があります。例えば「中学校から編入した」場合は認められません。
⑷ 経歴(学歴・職歴)について
「経営・管理」か「事業にかかる分野」の博士・修士・専門職の学位を修めているか、「経営・管理」の経験が3年以上必要です。
旧基準時代に許可を受けて、かつ、新基準の申請するまで在留していれば「経営・管理」で在留した期間で3年程度になる人が多いと思うので、現在在留中の方については、ここは問題ない方が多いと思います。
⑸ 事業計画書について
新基準では、新たに認定申請を行う場合は必須である事業計画書について、これまでは本人が作成したものをそのまま添付すれば良かったのが、「経営に関する専門的な知識を有する者の確認」を得ることが必要になりました。
経営に関する専門的な知識を有する者とは、「税理士」「公認会計士」「中小企業診断士」のいずれかです。
更新においては事業計画書は必要書類には入っていませんが、実務上は当事務所でお受けする場合はどの程度作りこむかは別として、作成することが多いです。特に、新基準に現時点で該当していない会社の場合は新基準に完全移行するまでの間に新基準に達しうるかを審査されるので慎重に作成する必要があります。
現時点でどの程度の書類を求められるかは明確に出ておりませんが、場合によっては新基準の審査と同程度の確認を入国管理局側が求めてくる可能性があります。
⑹ ガイドライン記載の「申請に関する取扱い」について
従前から明記されてはいなくても事実上はある程度下記の通りに扱われていましたが、明記されたことにより厳格になっていくものと思われる点をご紹介します。
① 事業内容について
業務委託を行うなどして、経営者としての活動が十分に認められない場合、不許可になります。
例えば「民泊運営の会社」で、管理は全て外注しており本人がほとんど動くことがない場合などです。
② 事業所(事務所)について
原則自宅は認められません。
従前は自宅も一定の要件のもと認められていましたが、運用上は令和4年から厳しくなり、今回明確に「認めない」とガイドラインに明記されました。
事業所の要件は他にもあり、独立性(個室であること)や一定の面積が求められます。また、設備関係も揃える必要があります。
自宅を事業所としている方については次回の申請までに個室の事業所を確保する必要があります。
③ 永住許可について
更新ではありませんが、在留資格変更を検討していた方については注意が必要です。以下ガイドラインを引用します。
改正後の許可基準に適合していない場合は、「経営・管理」、「高度専門職1号ハ」⼜は「高度専門職2号」(「経営・管理」活動を前提とするもの)からの永住許可及び「高度専門職1号ハ」から「高度専門職2号」への在留資格変更許可は認められません。
④ 在留中の出国について
「正当な理由なく」長期間出国していた場合は不許可になる可能性があります。
逆に「正当な理由(商談・現地調査など)」があれば認められるということになりますが、更新時にしっかりと立証していく必要があります。
また、出国以外でも日本国内でちゃんと経営活動をしていたかどうかを問われる可能性もありますので、日ごろの活動を「日報」のように記帳していただくのが効果的です。
➄ 公租公課の履行について
所属する法人(又は個人事業)における労働保険、社会保険、国税・地方税を納付しているか確認されます。
納税証明書等の資料の提出が必要です。
また、旧基準でもありましたが、本人の納税証明も必要なので、所属する法人・本人の双方がきちんと公租公課を納めている必要があります。
⑥ 事業を営むために必要な許認可の取得について
飲食店などの許認可が必要な業種の場合、許認可の取得状況を説明する必要があります。前回申請時に許可証などを提出していない場合は提出を求められます。
現在、新基準の許可要件を満たしていない方は…
過去は変えることができませんし、旧基準ベースで活動を行っていたからと言って直ちに不許可になるわけではありませんが、新基準に即した状況を作ることはそう簡単ではありません。
特に資本金についてはすぐに基準に適合するようにするのはかなり難しいと思われます。例えば現在の資本金が500万円とすると増資に必要な金額は2500万円です。2500万円を資本金に充てることができる利益剰余金がある会社はそう多くはありません。また、国外の口座から送金することも送金元の国と日本の金融機関のガードが厳しく簡単には送金できません。
ほか、常勤従業員の雇用も会社の状況によっては簡単なことではありませんし、事業計画もこれまで以上にしっかり作りこむ必要もあります。本人の活動経歴の立証など、これまでの「経営・管理」の更新より入念に準備する必要があります。
一部では「移民ビザ」などと呼ばれ、経営実態のない会社が多く存在していることが今回の新基準厳格化に繋がったと思われますが、一方で真面目に経営・管理の活動をしているにも関わらず、新基準の煽りを受けて帰国を余儀なくされる…という事態を何としても回避したいと当事務所は考えております。(※そのため「実態のない経営・管理」の方の更新等のご相談、受任はお断りしております。)
当事務所の行政書士は過去に多くの事業者の「経営・管理」の認定・変更の申請、更新申請を取り扱ってきました。もともと旧基準時代から基準を上回る程度の準備と経営指導を行ってきた経験を生かして対応させていただきます。「経営・管理」で在留する方の状況は極めて厳しいですが、早い段階から立証準備をすることで更新することも可能な場合がございます。
これまで札幌市及び札幌近郊でご自身で認定・変更・更新の手続きをされていた方も、別な事務所様にご依頼頂いていた方もぜひ一度ご相談ください。
※当事務所では当事務所が過去に関与したご紹介の方以外のご相談は初回から有料ですのでご注意ください。


