近年論争(?)になっている外国人の「土葬」の問題について~墓地、埋葬等に関する法律を読んでみる~

コラム

技能実習、特定技能等でイスラム教圏からの入国者が増えています。その影響もあってか(元々あった問題が表面化したのか)ニュースやSNSでこの問題が出てくることが多くなりました。もっとも、土葬を原則とするのはイスラム教だけではなくキリスト教や他の宗教でもあることです。

そもそも日本は火葬率がほぼ100%に近いです。厚生労働省の統計によれば、2021年(令和3年)の全国の死体・死胎の合計は151万2973体、うち埋葬(土葬)は462件です。(厚労省のデータはこちら

99.9%が火葬されています。

しかし、世界的に見ればここまでの火葬率の国はありません。従って、日本の常識が必ずしも世界的に常識かどうかというのは考える必要があります。また、「土葬」について許可を出すのは一体誰なのか?という点も考察していきたいと思います。

墓地、埋葬等に関する法律について

法律名が長いので以下は「墓地埋葬法」と表記します。

まず、墓地埋葬法によれば、土葬自体は禁じられていません。法文の中で「埋葬又は火葬は~」と多く出てくるので、埋葬も前提とした法律です。ただし、制定されたのが昭和23年なので、「既に70年以上前に作られたものがベースになっている」という前提を理解する必要があります。

目的を読んでみましょう。

第一条 この法律は、墓地、納骨堂又は火葬場の管理及び埋葬等が、国民の宗教的感情に適合し、且つ公衆衛生その他公共の福祉の見地から、支障なく行われることを目的とする。

「墓地、納骨堂又は火葬場の管理及び埋葬等」について、「【国民】の宗教的感情に適合」、「公衆衛生その他公共の福祉の見地から、支障なく行われること」を目的としています。

ここでいう【国民】は日本国民を指し、外国人は含まれないと思料します。ただし、宗教的感情に適合し…であることから、本人及び遺族の感情ではなく「広く国民一般に理解されるかどうか?」というものです。

例えば、「死体若しくは焼骨をそこら中に放置する」という行為はこの法律や死体遺棄罪になりますが、良い・悪いは別として日本人の宗教的感情(死者への弔い)を考えれば非常識と考える方が多いと思います。また、場合によっては「気味が悪い」と考える方もいるかもしれませんね。そういった感情を考えて、墓地埋葬法では埋葬又は焼骨の埋蔵は墓地以外の区域に行ってはならない(墓地埋葬法第4条1項)と決まっています。

その後の「公衆衛生その他公共の福祉の見地から、支障なく行われること」は、一般論として死体は腐敗します。腐敗すると「臭気を出す」「虫がわく」「腐敗することにより土壌等を汚す」恐れがあります。きちんと埋葬すればよいのかもしれませんが、杜撰に埋葬するとこれらの問題が生じ「公衆衛生その他公共の福祉」に反してしまいます。

ほか、火葬・土葬に限らずですが、これらの施設を作られることにより周辺住民の反対にあうこともあります。

心理的に「死者が集まる場所に抵抗がある人」もいますし、「呪われそう」などという科学的な根拠はないものの、心理的圧力になってしまう人もいます。また、こういった背景から、近隣にこのような施設ができると地価が下がるリスクもあります。心理的な面だけではなく、経済的な面においても一筋縄ではいかない問題です。

特に「土葬」においては、日本人の大多数が宗教的慣習から「不要」と考えているであろうことから、新たに設置等しようとする場合に理解を得るのは余計難しいと思われます。

なお、札幌市のホームページでは「札幌市内の墓地等の需給バランス確保等の理由から、新たな墓地の許可は、現在出しておりません。」とのことです。人口減少時代にあることから、自然なことかと思います。(詳細は札幌市ホームページへ)

第五条 埋葬、火葬又は改葬を行おうとする者は、厚生労働省令で定めるところにより、市町村長(特別区の区長を含む。以下同じ。)の許可を受けなければならない。

埋葬、火葬又は改葬(お墓の引っ越しのこと、墓じまい等)を行おうとする者は通常は遺族です。遺族らはこれらを行おうとする際に許可を受けなければいけません。無許可で行うと違法です。

第九条 死体の埋葬又は火葬を行う者がないとき又は判明しないときは、死亡地の市町村長が、これを行わなければならない。

ちょっと乱暴な言い回しですが、死体の処理を適切にしないことは公共の福祉、衛生に反するため、放置はできません。そのため、遺族等が判明しない場合には「死亡地(本籍地や住所地ではない)の市町村長」が行わなくてはいけません。

第十条以降は墓地、納骨堂、火葬場に関する事柄と罰則について定められています。

第十条だけ読んでみます。

第十条 墓地、納骨堂又は火葬場を経営しようとする者は、都道府県知事の許可を受けなければならない。
2 前項の規定により設けた墓地の区域又は納骨堂若しくは火葬場の施設を変更し、又は墓地、納骨堂若しくは火葬場を廃止しようとする者も、同様とする。

基本的に墓地、納骨堂、火葬場を管轄するのは「都道府県知事」です。

ただし、実際上は各市町村で個別に条例を設けています。

北海道と札幌市の条例はどうなっているか?

⑴ 北海道

墓地、埋葬等に関する法律施行細則、制定:昭和59年10月1日規則第100号、最終改正:令和4年12月20日規則第66号によれば設置基準等の定めはありますが、特に土葬のことについては定めはありません。(詳細は北海道ホームページ参照)

設置基準だけ紹介しておきます。

(設置場所の基準)

第5条 墓地及び火葬場の設置場所は、次に掲げる基準に適合するものでなければならない。

(1) 国道、道道その他交通のひん繁な道路、軌道、河川、湖沼、海岸、公園、学校、病院その他公共施設及び人家から110メートル以上離れている場所であること。ただし、知事が公衆衛生上その他公益の見地から支障がないと認める場合は、この限りでない。

(2) 飲用水を汚染するおそれのない場所であること。

(3) その他公衆衛生上支障がない場所であること。

先ほどの北海道のホームページに様式もありましたが、見たところ、特に「土葬、焼骨」の区分はありませんでした。

⑵ 札幌市

札幌市墓地等の経営の許可等に関する条例(詳細は札幌市ホームページ参照)に定めがあります。

まず、16条で近隣住民の説明し理解を得られるよう努める旨の定めがあります。設置の際だけではなく経営の変更時にも必要です。

(計画の説明)

第16条

事前協議を行おうとする者は、事前協議に係る書面を提出する前に規則で定めるところにより、墓地又は納骨堂の経営又は変更に係る計画について、近隣住民(墓地又は納骨堂の敷地に接する敷地(墓地又は納骨堂の敷地に道路が接する場合にあっては、当該道路に接する敷地であって、当該墓地又は納骨堂の敷地から当該道路のうち最も幅員の大きいものの幅員に1.5を乗じた距離の範囲内にあるものを含む。)に存する建物の住民をいう。以下同じ。)に説明しなければならない。この場合において、事前協議を行う者は、当該計画について近隣住民の理解が得られるよう努めなければならない。

また、土葬については以下の通り定めがあります。

(埋葬の条件)

第20条

死体を埋葬し、又は改葬しようとするときは、その穴の深さは地表から棺の上面まで1.5メートル以上としなければならない。

土葬自体は禁じられていませんが、そもそも土葬前提の場合、住民理解を得るのに苦労しそうな感じがしますね。

結局土葬していいかどうかは誰が決めるのか?

引用すると迷惑になる可能性がありますことから敢えて示しませんが、とある自治体のホームページにおいて見解が示されていました。要旨としては以下の通りです。

「火葬が一般的ではあるが、土葬は墓地埋葬法上禁止されておらず、墓地の管理者が判断する」

つまり、個々の条例等で定めはあるものの、特にない自治体の場合は「墓地の管理者が判断」することになります。

この点については問題があるように思います。

なぜなら、お墓や納骨堂は「死者が眠る場所」という定義は多くの国民が周知の事実であり、心理的な問題はあるにせよ、少なくとも必要な施設として認められているものです。

ただし、土葬(火葬せずに土に埋葬する)については多くの国民は想定していない事実です。

この点について、「墓地の管理者に一任」というスタンスはあまりにも無責任ではないかと思われます。

問題の所在

既存の墓地の多くは「火葬」を前提としていることから、墓地管理者も「土葬」に難色を示して土葬希望者を受け入れる墓地はごく少数です。

近年は外国人も多く入国していること等の事情から、「土葬可能な墓地」の設置に向けて動きがあることは事実です。実際に2025年(令和7年)には宮城県の村井知事が墓地設置に意欲を示しました。また大分県日出町でも同様の動きがあり、ムスリムの協会から墓地等経営計画協議書が提出されたことがあります。日出町ではその後町長選で反対派の町長が当選するなどして混迷しているようです。

勘違いしてはいけないこと~自治体の対応~

上記の大分県日出町の件ですが、協議書が提出されたことに対して審査し、「事前協議済書」を出したことを問題視するような意見もありますが、これは間違いです。

自治体側としては、要件を満たしているのに不当に突き返したりすることはできません。これを感情論で突き返して良いという結論は出ないです。

したがって、自治体を誹謗中傷するようなことは許されません。

ただし、札幌市の条例を見れば「住民に説明」し「理解を得るよう努める」なので、住民投票を行う性質のものではないという点は制度整備の観点からいかがなものか…と思います。

法整備と憲法第20条について

日本国憲法第20条では、「信教の自由は、【何人に対してもこれを保障する】」とあります。ここでは「何人(なんぴと)に対しても」なので、外国人も当然に含まれます。

ただし、内心の自由は「絶対的」なものですが、外部的行為については公共の福祉の制限を受けるものと解されます。信教の自由のために他者の権利を侵害することに制限がないと、何でもアリになってしまいます。

土葬については「外部的行為」にあたるので、憲法第20条を盾にして認めてもらう、というのは乱暴な理論かと思います。(ほか、集会、宗教的儀礼等についても基本的には「外部的行為」なので無制限に認められるものではありません。)

ところで、先ほどまでのお話をまとめると、土葬については以下のような状況です。

① 国は「土葬」を禁止していない

② 多くの場合地方自治体も明確に「土葬」を禁止していない

③ 決めるのは墓地管理者の判断(現状大多数の管理者は許可していない)

この点については、法律でもう少し具体化すべきかと思います。

法律や条例で一律禁止にすると、憲法第20条との兼ね合いで後に違憲かどうかという紛争になる恐れがあります。

一方で、日本の文化、風習からして抵抗が多いことも事実です。また、日本は国土自体がそこまで狭いわけではないですが、人が住める地域(可住地面積)はおおむね30%です。

抜本的な解決はハードルが高いですが、「法制度、条例を作った時点においては今のような社会になることは想定していなかった」と思われるので、何らかの指針を示さないといつまでも解決しません。

このような文化、風習の違いをすり合わせしていくことが、「外国人との共生」「外国人労働者の受入れ」に不可欠ではなかろうかと思います。

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