行政書士の報酬は高い⁉値決めのリアル…

コラム

はじめに

行政書士に限りませんが、「士業」にお仕事を依頼する際の報酬を聞いて「高い!」と思ったことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか?

最近Ⅹで見たのですが、「行政書士の報酬は高い」という他士業様の意見を見ました。投稿に至る詳細な前後関係などはわからないのですが、「士業=高い」と思っている層も一定数いるだろうと考え、当事務所の報酬の設定方法などを紹介できればと思います。

なお、最初におことわりですが、本稿は個人的な見解を示すもので、同業者の先生或いは他士業の先生方を批判等するものではございません。

見積を貰う前の方、見積を貰って悩んでいる方、値決めに悩む士業の先生方皆様に「士業の報酬とは?」という観点でお読みいただけますと幸いです。

そもそも「士業」に依頼する価値って何か?

そもそも「士業」は不要?

行政書士に限った話ではありませんが、「士業に依頼しない」という選択肢は基本的にどの士業でも一緒です。

本人(会社の場合当該法人、本稿では以下「本人」とまとめます。)が自分で手続きを行うこと自体は可能だからです。

行政への申請・届出もそうですし、弁護士業でいえば訴訟も本人で行うことができます。

そういう意味では、絶対に「士業」がいないと困る…ということはないのです。

そして、国や自治体が定める決まりに則って手続きがされるわけですから、基本的に本人がやっても士業が関与しても、最終的な結論が異なることは通常ないはずです。

本人で手続きを進めるリスクとは?

さて、上記の通りであれば、本人で進めたほうがコスパは良いです。少なくとも行政書士の仕事をしていると、役所と言うのは大変親切な場所なので、大体手続きについては教えてくれます。

ただ、大きなリスクもあります。それは、「本人が気づいていないことがある」ということです。そして、そのことが大きな落とし穴になることがあり得るのです。

行政手続きでいえば、単に「不許可」等、いわゆる「ダメだった」で終わる事案であればまだよいですが、手続きの際に不用意な発言や中途半端な書類を提出することで、「現在違法な状態なのではないか?」と疑念を抱かれたりすることがあります。

また、一般に手続きに要する期間については、官公署が出す「標準処理期間」を参照する方が多いですが、標準処理期間は「何も補正等がない場合」において、「役所の営業日(平日)ベース」の日付ですから、本人が想定していたよりも長くかかる…ということがあります。

ほか、提出すべき書類には意味がそれぞれあって出すわけですが、言われたまま捉えてしまうと「何のために見る書類か?」を理解していないため、代替になりうるような書類を思いつかず手続きを断念することもあり得ます。

実は「士業」に仕事を頼むのはコスパが良い?

士業に依頼するメリットを行政書士で説明すると、まず「行政手続き慣れしている」ということが挙げられます。手続き慣れしているということはスムーズに申請が行えるということのほかに、事前にリスクになりそうなことがあるときには、リスクを排除したうえで申請することができます。

実際に申請前に会社の体制を見直す、書類等を整備することをしてから提出することもあります。

また、面倒な証明書取得についても「指定された書類」をきちんと準備できずに取り直しになるケースもあります。

例えば住民票に「本籍記載」が必須であるにもかかわらず、記載されていないものが出たり、登記されていないことの証明を取得する際に住所・本籍地を正確に記載されていない等があります。また、申請に手間取っている間に有効期限(一般に取得日から3か月以内のことが多い)超過することもあります。

当事務所では基本的には全て必要書類は代理取得する方針です。費用は実費(窓口で取得にかかるお金)は頂きますが、原則取得にかかる報酬は頂いておりません。この点は後述します。

諸々の手間を考慮すれば、士業に依頼して報酬を払うのと、本人の人件費を考えたらどちらが安いのか?という問題にもなってきます。

当事務所が思う「士業の価値」とは?

先ほど挙げたように「手間の削減(いわゆるタイムパフォーマンス、タイパ)」が挙げられるほか、多様な行政手続き経験と法的見地から「リスクになりそうな部分を客観的に認識、是正しながら手続きを進められる」こと、申請にあって代理でお受けする場合は「役所との窓口としてワンクッション挟めること」があります。

上記には行政書士が「書類を作る」という実作業のほかに「過去の経験」「法的知見」から危なさそうな部分があれば、その部分を是正することができる(リスクを知ることができる)、「役所と本人との間の取り持ち(やや誇張した表現ですが、「仲介」や「意訳」)出来ること、あたりが行政書士が打ち出すことができる付加価値だろうと考えています。

個人的に「成果100%、成果がない場合返金」という士業のスタイルは好きではありません。どちらかと言うと「考えられるリスク、面倒ごと」を理解していただいたうえで、仕事の過程に対しての報酬を受け、サポートするというスタイルで仕事しています。

そのため、面談成約率が正直低いです。(紋切型で「出来ます」とか「安くします」とは言えない。)

私の意見ですが、行政書士の報酬には

・過去の経験、学習に投下した時間、コスト

・共同作業を進めるという「過程」におけるリスクヘッジ、、相談

・成果物(申請書や許可証など)

に対してトータルでバランスよく報酬を頂くような体制にしたいな…と考えて規定を作っています。士業の価値というのは、単に手を動かすだけではなく、これまでの蓄積、将来を一緒に設計していく、成果物を渡したあとのことまで考える…こういった知識、価値観、行動に価値を見出していきたい(つまりこれに対しての報酬を確保したい)と考えています。

そうしないと沢山いる行政書士の世界で埋没していってしまいます。

値決めのリアル…安い高いがあるのは当たり前?

報酬の統計調査がある

大前提として「報酬設定」は基本的に自由なので、自分で好きなように設定できます。

5年に1回行政書士会が行っている報酬額統計調査(直近だと令和7年度)があります。

【報酬統計調査はこちら(外部、PDF)】

ただ、統計の中を見ても正直値段に相当差があります。その事情について考察してみたいと思います。

報酬額の決め方は「その先生の状況によって変わる」

価格の決め方だけでいえば、一般論としては「地域の大手より若干下げる」という方法が多いと思われます。

実際に私は前事務所で勤務している際に、事務所内で規定が決まっていない業務の見積を作るときは必ず上記の統計を見ていました。また、近隣の同規模っぽい事務所のおおよその報酬額を見て検討していました。

ところが、これだけだと事務所的には「雇っている行政書士1名の売上」としては到底足りませんでした。

一方で、昔からの行政書士の先生は報酬額を見直していないことも多くあります。「そんなので食べていけるの?」と聞きたくもなるような金額であることがあります。経験があるので、余計な時間をかけないで処理できる…という事情もあるでしょうが、それ以上に別な問題もあります。

それは「行政書士報酬が主たる収入なのか?」という問題です。

大変失礼な表現であれば申し訳ないのですが、私のように働き盛り(38歳)で生計を立てていくために必要な収入と、公務員を定年して行政書士を始める人、主婦が自宅の一室を事務所として開業する事務所では「必要な収入額」が異なってきます。

当然前者の方が稼ぎが多くないとやっていけません。

また、ベテラン先生の場合「何十年も値上げしない」という人もいますが、物価高騰の時代にデフレ真っ只中な基準で値決めをされてしまうと到底価格競争では勝てません。(私が小学生のころはコンビニおにぎりは100円、マクドナルドは59円という時代がありました…今は…

日本人は「値引きが正義」とか「値上げは悪」という観念が未だに強いため、値上げをするのは結構大変な労力と気力を要します。また、顧客離れを恐れて踏み切れないという事情もあります。

私は、経費を差し引いた後の利益に対して、かかる労務の時間でおおよその時給額を算定して、1案件に対して「時間給で最低2000円は確保する」と決めています。そうでないと生活が成り立たないからです。(時給2000円とは、アルバイトしている方からすれば「高額報酬」の部類でしょうが、そこから経費とかひかなきゃいけないので手元に残るのは最低賃金+@程度…)

報酬規程の作り方

私は上記に沿って、「時給2000円+@」は最低ライン確保できるような内容で値決めしました。

業務の進捗やクライアント様の事情で追加が発生することがありますが、多少の追加は飲み込めるような内容にはしています。切迫する中でクライアント様にいちいち追加見積りを出して承諾を得るのは手間がかかるためです。(※手続き方針等確認すべきことは当然確認して進めます。)

他の事務所さんの報酬規程の作り方はわかりませんが、労務単価の視点は多くの事務所さんも持って値決めしていると思います。

当事務所では、証明書の取得代理は全て込みです。事務所様によっては「1通いくら」で設定しているようですが、当事務所では実費(本人が行ってもかかるお金と郵送料、小為替手数料)のみ頂くようにしています。証明取得にかかる労務は報酬に含めて提示しています。

郵送代(当事務所は基本的にレターパックライトでやりとりしますので1往復で860円)、小為替の手数料(1通200円)の経費はかかりますが、自分で役所に出向く手間を考えれば妥当かと思います。

報酬規程で目を引く(安く見せる)方法としては、基本料金を低廉に抑えて、あとからあれもこれもお金かかるから…とオプションがてんこ盛りになるパターンか、自分で全部証明書関係取ってきて…とクライアント様任せにしてコストを抑えている事務所もあると思います。これは各々の方針に沿っているのでどちらが良いというものではありません。

ただ、私は個人的に報酬額を「〇〇円~」の「~」の表示が嫌い(結局いくらかかるか見てもよくわからない)なので、極力基準を明確にして明示しています。

後は経験の多い業務であれば「慣れているから」安い、不慣れな業務はあまり積極的に受任しなくてもいいから高い…など各事務所によって様々です。

大手事務所は安くて良いのか?

基本的に小売り業界(スーパーマーケットなど)では大きい方が有利と言われています。これは規模の大きさにものを言わせて大量発注でコストカットするというモデルだからです。

士業事務所の大手は「小売りとはビジネスモデルが違う」ので大変なんだろうな…と思います。労働集約型の産業なので案件をたくさん受けるには比例して「人手」がたくさん必要だからです。(IT、AI全盛の時代においては少しずつこの傾向は崩れそうですが、仕事の本質が変わらない以上劇的に変わることはないでしょう。)

職員の人数が多い事務所は単純にテナント面積を食ってしまうこと、従業員や顧客の来訪のしやすさやブランディングから街中に事務所を開設するケースが多いので場所代料が高いというデメリットがあります。

また、士業の仕事は基本的に当該資格者の「属人的業務」になりがちなので、資格者・職員の退職等によってクオリティが下がることもあり得ます。

ほか、最近は士業でも大手事務所では特に「個人客層」に広告を打つ事務所が多いですが、広告料も当然報酬に反映されます。結構バカにならないくらい高いです…最近は。

したがって、規模の大きさや知名度と事務所の良しあし(価格、クオリティ)が必ずしも一致しない業界であるといえます。

まとめ

・行政書士報酬は単に書面作成や手続きを代理する「労務(手間賃)」のほかに、過去のノウハウ、学習などに割いた時間、受任リスクに対する対価も含まれており、成果物のみに払われるものではない。

・本人で処理するリスクを分散することが出来る。

・事務所によって値決めの方法はまちまちであること、報酬額や事務所規模は必ずしも仕事のクオリティとは比例しない。

士業の報酬には色々な意味があり、当事務所では一応上記の考えに沿って基本的に報酬は設定しております。

「士業の報酬は高い」と考えられている方や士業の先生で「値決めどうしよう?」と悩まれている方に本稿が良いきっかけになれば幸いです。

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